
住宅には、壁や天井の内部に断熱材が設置されています。断熱材は、熱が伝わるのを妨げることにより、部屋の中の温度を保ちやすくする効果があります。そして、断熱材にもさまざまな種類があり、それぞれ違った特徴を持っていることをご存じでしょうか。今回は、断熱材の種類とそのメリット・デメリットを紹介します。
無機繊維系断熱材の特徴
無機繊維系断熱材は、鉱物などを原料とした断熱材です。グラスウール、ロックウールの2種類があります。
グラスウールの特徴
グラスウールは、原料であるガラスを高温で溶かし、繊維にしてから綿状にしたものです。空気の層が重なることにより、高い断熱効果を生み出します。
原料が鉱物であることから、燃えにくいという特徴もあり、安心できるといえるでしょう。人体にも安全であり、リサイクルガラスを利用しているため環境保全の一環となります。
このような特徴を持ちながらも安価であり、壁、天井、床など施工できる場所が多いため広く普及しています。デメリットは、湿気に弱いというところです。湿気や結露への対策が不可欠となります。
ロックウールの特徴
もうひとつのロックウールは、玄武岩やスラグなどの鉱物を原料としています。こちらもグラスウールと同じく、燃えにくい素材で騒音に強く、断熱性も高いものです。
撥水性も高くなっています。撥水性は高いですが湿気には弱く、同じく湿気や結露対策が必要となります。
木質繊維系断熱材の特徴
木質繊維系断熱材は木質系の素材を原料とし、繊維状にしたあと綿状にして作った断熱材です。セルロースファイバーと呼ばれ、新聞紙やおがくずなどを使用した地球にやさしい断熱材です。
製造過程で必要となるエネルギーも、グラスウールの何十分の一で済むというエコな素材です。無機繊維が針金のように細く均一であるのと反対に、木質繊維はさまざまな繊維が複雑に絡み合い、気胞がたくさんあることにより断熱効果と吸音効果を高めます。
木や紙から作られているセルロースファイバーは、調質効果がとても高く、結露も防ぎやすいです。さらに、無機繊維系断熱材のように湿気対策や結露対策に力を入れる必要がありません。
とくに、日本の住宅では壁内結露により住宅の寿命が短くなっているといわれているため、調質効果の高い断熱材を使用することでその寿命を長くすることができます。そのほかにも、防火効果や防虫効果にも期待ができる断熱材です。
施工時は壁の中に高密度で埋め込むため、防音効果も非常に高いものとなっています。非常にたくさんのメリットがあるセルロースファイバーは、実はアメリカではナンバーワンのシェアを誇っています。そのため、導入の際にはコスト面に少し注意が必要です。
天然素材系断熱材の特徴
天然素材系断熱材には、羊毛を使ったウールブレスや、炭化コルクを使用したものがあります。
ウールブレスの特徴
ウールブレスは、製造過程において化学物質を一切使用していません。自然由来の素材を使用することで有害物質を生み出さず、健康に配慮した住宅に使用されることもあります。
半永久的な防虫効果を持ち、調質効果や断熱性も優れています。また、臭い成分を繊維内にキャッチする作用があるため、トイレ臭やタバコ臭などの不快なにおいに対しての消臭効果も高いです。
炭化コルク
炭化コルクは、ワインの栓などを製造する際のコルク端材などを利用して作られた断熱材です。もともとコルクには空気がたくさん含まれており、断熱効果が高いものです。それを更に炭化させることにより断熱効果や調質性、吸音性を高めています。
また、防ダニ効果も高く、アレルギーの発症を抑えます。このような天然素材系断熱材は、環境にも人の体にもやさしくできていますが、コストが高くなることには注意が必要です。
発泡プラスチック系断熱材の特徴
発泡プラスチック系の断熱材は、発泡スチロールと同じ素材を使用したビーズ法ポリスチレンフォームや、押出法ポリスチレンフォームがあります。断熱性が高く、施工がしやすいことから人気が高まっています。
ビーズ法ポリスチレンフォームは、燃えにくい素材で、シロアリの被害からも守ってくれるという特徴があります。押出法ポリスチレンフォームは、薄いながらも断熱効果が高く、水に強く軽量であることがメリットです。
そのほか、結露やカビの発生が少ないものの高価である硬質ウレタンフォームや、燃えにくく高い断熱効果を長く維持できるもののかなり高価なフェノールフォームなどもあります。
まとめ
断熱材には、素材や形状によりさまざまな種類があります。それぞれの断熱材のもつ特徴も多岐にわたっており、どんなポイントを重視するとよいのか迷ってしまいます。まず気になるのは断熱効果がどれほど高いのかですが、そのほかにも調質効果、防音効果、防虫効果なども気になるでしょう。生活スタイルによって、どこを重視するのかを絞ることが大切です。火災時に有毒ガスが発生してしまう素材もあるため、万が一のことも考えて、防火性や安全性の高いものを選ぶと安心でしょう。性能によってかかる費用も異なるため、専門業者に相談の上、しっかりと比較検討をして自分に合った断熱材を選ぶようにしましょう。